今更ながら『メイドインアビス』を全話イッキ見したんだが、正直言ってこれはアニメというより一つの「劇薬」だ。最初こそ大穴へ挑む冒険ファンタジーというワクワクする導入に完全に油断させられる。レグとリコの微笑ましいやり取り、未知の遺物、心躍る冒険の旅路。しかし、深層へ進めば進むほど、この作品は牙を剥く。かわいいキャラデザと、残酷なまでの描写の対比が狂気的すぎて、見ていて何度も吐き気を催した。アビスという巨大な穴は、単なる舞台装置ではない。登場人物の夢も、希望も、肉体さえも無慈悲に粉砕する、意思を持った「捕食者」だ。特に第2期の記憶は今でもフラッシュバックするほど凄まじい。美しさとグロテスクさが紙一重で同居するあの独特の色彩設計と、Kevin Penkinが手掛ける壮大で神々しい劇伴が合わさることで、視聴者は嫌でも深淵の底へと引きずり込まれる。物語が進むにつれて「愛」や「家族」の定義すら問い直されるような、哲学的な問いかけまで投げかけてくるんだ。単なる苦痛の連続ではなく、その先にあるあまりに過酷な「救い」を描き切った作者の執念に脱帽するしかない。見終えた今、脳内に焼き付いたアビスの景色が離れない。心に深い爪痕を残されたい人、人生観を破壊されたい人は絶対に観てほしい。ただし、途中で引き返すことはもうできないから覚悟しておくように。この作品を観る前の自分にはもう戻れない。