今更だけどヴィンランド・サガを読み返してて、マジで震えが止まらない。トルフィンがかつての戦士としての自分と決別し、復讐の連鎖を断ち切るために歩み続けるその姿。特に最近の完結に向かうまでの展開は、ただの「戦記物」だと思って読み始めた読者を完全に置き去りにするような、哲学的かつ慈愛に満ちた結末への舵切りが神懸かっている。
普通、この手の漫画って最強の敵を倒して終わり!みたいなカタルシスを求めるのが定石じゃないか。でも幸村誠先生は、あえて「戦わないこと」を最強の戦いとして描き切った。物語の中盤、かつての猛者が無力感に苛まれながらも、自分の手が汚れていることを自覚し、それでも次世代に剣を持たせないための旅を続けるという選択。この精神的なタフさには、現代を生きる我々も教えられるものが多い。
単なる歴史漫画の枠を超えて、暴力の無意味さと対話の困難さをこれだけ真っ向から描き切った作品は他にないと思う。特にヴィンランドでの入植シーン、あれほど緊迫感のある「交渉」の描写は、どのバトル漫画の決戦よりも手に汗握った。読み終わった後に訪れる、言い知れぬ虚無感と、それ以上に込み上げてくる深い慈悲の感情。この読後感は、他のどんな名作とも比較できない唯一無二のものだ。一生かけて読み続けたい、教科書にするべき歴史の教訓がここにある。