最初は「なんだ、また動物キャラが喋るほのぼの系か」と油断していた。しかし、この作品の正体はそんな甘いものでは断じてない。主人公のタクシードライバー・小戸川の何気ない会話の一つひとつ、車窓から見える風景の些細な違和感が、物語が進むにつれてパズルのピースのようにカチリと噛み合っていく。その快感といったら、脳内でアドレナリンが洪水のように溢れ出す感覚だ。最初はただの街の喧騒だと思っていたノイズが、実は絶望的なまでの悪意と、現代社会の歪んだ承認欲求の集合体だったことに気づいた瞬間、背筋が凍りついた。ただの日常の断片が、緻密に積み上げられたサスペンスの巨大な塔へと変貌する過程は、もはや芸術の域。可愛らしい見た目に騙されて見始めると、ラストで突きつけられる人間の業の深さと、物語の構造が崩壊する瞬間のカタルシスで、自分の社会生活に支障が出るレベルで考察に没頭してしまう。伏線回収の精度が異次元すぎて、一度見終わった後に最初から見直さない選択肢はない。あの一見平和な日常風景が、二度目には全く違った、しかも吐き気をもよおすほど残酷な景色に見えてくる恐怖を、ぜひ君たちも味わってほしい。もう普通の日常なんて送れない、小戸川が見ていたあの景色が、脳裏に焼き付いて離れないのだから。