宝石の国、まだ読んでない奴は今すぐ読んだ方がいい。いや、読め。これは漫画という媒体の可能性を最大限に引き出した芸術作品だ。
最初はキラキラした宝石たちの爽やかなファンタジーかと思って読み始めたんだ。主人公のフォスフォフィライトが他の宝石たちと交流しながら成長していく、王道の冒険譚だと信じていた。だが、作者・市川春子先生はそんな生易しい物語を描くはずがなかったんだよ。
物語が進むにつれて世界の本質が少しずつ明かされていく絶望感。ただの「欠損」が、いつの間にか「存在の改変」にすり替わっていくあの感覚は、他の漫画では絶対に味わえない。特に中盤から終盤にかけてのフォスの変貌っぷりと言ったら、もう言葉を失う。あんなに愛くるしかった主人公が、どうしてこんなにも無惨で、同時に神々しいまでに過酷な運命を辿らなきゃいけないんだ。
作画に関しても、もはや言葉はいらない。あの無機質な宝石たちの質感、背景の圧倒的な書き込み、そして極限まで無駄を削ぎ落としたスタイリッシュなコマ割り。モノクロのページから音が聞こえてくるような、あるいは色彩が溢れ出してくるような錯覚に陥る。特に「祈り」というテーマに辿り着いた時の構成力は、もはや文学的だと言っても過言じゃない。読み終えた後の、あの独特の静寂と、胸の奥底に突き刺さったまま抜けない「痛み」。この感情を共有できる人が一人でも増えてほしい。本当に、一生忘れられない作品に出会ってしまった。