最初は金塊を探す冒険譚だと思って読み始めたんだ。北海道の雄大な自然の中で繰り広げられるサバイバル、美味しいジビエ料理、そしてアイヌ文化の丁寧な描写。確かにそれだけでも最高に面白い。でも、物語が進むにつれて俺の認識は完全に破壊されたよ。これは単なる宝探しじゃない。日露戦争という巨大な時代のうねりの中で、生き残るために理性を捨て、獣に堕ちるしかなかった者たちの凄まじい「執念」の物語なんだ。
とにかくキャラクター全員が濃すぎる。狂気的な信念、歪んだ愛、そして命を賭した食への執着。特に「不死身の杉元」と名付けられながら、誰よりも死に近い場所で生きている彼らの生き様を見ると、現代のぬるま湯に浸かっている自分の悩みが急にちっぽけに思えてくる。笑えるギャグパートの直後に、血と泥にまみれた残酷な現実を突きつけてくる演出の落差が本当にエグい。一寸先は闇、というよりも「一寸先は爆笑か死か」みたいな独特のテンポに毒されてしまった。読み終わった今、これほどまでに人間という生物の醜さと美しさを同時に突きつけてくる作品に出会えた幸運に感謝しかない。未読の奴はマジで人生の半分を損してる。今すぐ樺太へ飛べ。