正直に告白する。最初は「落語? お堅い話でしょ?」と高を括っていた。だが、画面の中の彼らは、滑稽な扇子と手拭いだけで、人の生き様そのものを演じ切る怪物だった。本作は単なる落語の解説ではない。愛することへの執着、死への憧憬、そして時代に捨て去られゆく芸人の矜持を、これでもかとばかりに突きつけてくる。特に主人公である八雲の、長い生涯をかけた「落語と心中したい」という狂気じみた情念には、言葉を失う。ただの芸事だと思っていたものが、いつしか画面を通して刃物のような鋭さで視聴者の喉元に突きつけられる感覚。彼らは高座に上がるたびに、己の人生を削り出し、観客の心に火を灯していく。静寂の中に響く拍子木の音すらも、人生の重圧のように聞こえてくるから不思議だ。登場人物たちが纏う昭和の香りと、血の通った生々しい人間関係の残酷さが、観る者の倫理観を少しずつ麻痺させていく。見終わった後、ただの日常が以前とは違って見えるほど、魂に刻まれる余韻が凄まじい。特に後半にかけての、伝統が断絶していくことへの抗いと諦念が入り混じる演出は、もはや一つの芸術品と言っていい。ただの趣味のアニメだと思って舐めてかかると、間違いなくその深淵に溺れて一生出られなくなる。間違いなく20年代の金字塔と呼べる作品だ。