最初はただ綺麗な宝石たちがキラキラしているファンタジーだと思って読み始めた。正直に言おう、甘かった。まさかこれほどまでに「自己」という概念を徹底的に破壊し尽くす物語だとは夢にも思わなかったからだ。
主人公フォスフォフィライトが辿る変貌の過程は、もはや成長という言葉では片付けられない。失い、継ぎ接ぎされ、欠落を埋めるために何者かになっていく。その姿を追ううちに、読者は自分自身のアイデンティティすらも揺さぶられることになる。何をもって自分を「自分」と定義するのか。記憶か、肉体か、それとも魂の履歴か。そんな哲学的な問いが、美しいクリスタルの煌めきという名の仮面を被って容赦なくこちら側に突き刺さってくる。
物語後半、かつての仲間たちが遠い存在へと変容していく描写はまさに地獄だ。何億年もの時を孤独に彷徨う展開は、もはやSFを超えて一種の宗教儀式のようだった。救いがないのではない。救いがあまりにも人間という種の理解を超越しているのだ。全編を通して描かれる「永遠」という名の呪い。読了後、窓の外に広がる何気ない風景が急に異質なものに見えた。私たちが生きているこの一瞬の煌めきがいかに脆く、そして狂おしいほど尊いものなのか。物語を閉じてもなお、頭の中で粉々になった宝石の破片がジャラジャラと音を立てて鳴り止まない。一生忘れられない作品に出会ってしまった。