深夜の勢いでなんとなく再生した『灰羽連盟』。翼が生えた少年少女が壁に囲まれた街で暮らす、いわゆる「日常系」なのかなと思って見始めたのが運の尽きだった。正直、最初の数話の穏やかで牧歌的な雰囲気に完全に油断していた。しかし、物語が進むにつれて少しずつ剥がれ落ちていく「この世界が持つ不気味な正体」と、登場人物たちが抱える「自分が何者なのか、何の罪を背負っているのか」という自己否定に近い苦悩が、視聴者の心を容赦なくえぐってくる。
本作の恐ろしいところは、派手なアクションや劇的な展開で惹きつけるのではない点だ。淡々とした日常の裏側に潜む「出口のない閉塞感」や、過去という呪いからどうやって抜け出すかという極めて個人的で繊細な内省のプロセスが、観る側の胸を締め付ける。特に主人公ラッカが「自分の罪」と向き合い、壊れそうになりながらも他者との繋がりを通じて再生していく過程は、もはやアニメの域を超えて宗教的な体験に近かった。ラストシーンで見上げた空の青さが、これまで観てきたどんな映像よりも優しく、同時に残酷に感じられた。観終わったあと、あまりの余韻に数日間は現実の生活に身が入らなくなった。ただのファンタジーだと思って侮っていた自分を殴りたい。この静かなる傑作は、人生のどこかで必ず「自分自身の罪」と向き合うタイミングが来た人にこそ刺さる、魂の救済の物語であることは間違いない。