NHKのアニメ枠で放送されていたとき、正直「平家物語か、また硬い題材だな」程度にしか思っていなかった。正直、歴史の教科書に出てくるような名前の羅列と戦記物だろうとたかをくくっていたのだ。ところがどっこい、数話観終わった瞬間にスマホを放り投げ、天井を見上げて放心していた。この作品が描いているのは歴史の叙事詩などではない。運命に翻弄され、抗いようのない時代の濁流に飲み込まれていく者たちの「刹那の輝き」そのものだった。

何がすごいって、徹底して「個人の視点」に寄り添っている点だ。栄華を極める平家の面々が、実はそれぞれに愛し、悩み、苦しむ生身の人間であることが痛いほど伝わってくる。特に主人公・びわの視点から描かれる世界は、色彩豊かでありながらも、背後に常に死の気配と無常観が漂っている。音楽と映像の調和も異常だ。山田尚子監督の演出が光る、繊細な手の動きや視線の揺らぎ一つひとつに、言葉では言い表せないほどの情感が宿っている。豪華絢爛なはずの平家が没落へ向かっていくその様は、残酷であると同時に、驚くほど美しい。「おごれるものも久しからず」という言葉が、これほどまでに胸を刺す日が来るとは思わなかった。単なる歴史の勉強だと思ってスルーしていた自分が恥ずかしい。現代の私たちが抱える「喪失感」や「明日への不安」と完全にシンクロして、視聴後にはもう、自分の世界が少し違って見えるような感覚に陥った。もし未視聴の人がいるなら、今すぐ観てほしい。これは全人類必修の「美の極致」だ。